農場とともに「食の安全・安心」を守る農場管理獣医師

農場管理獣医師とは?

「飼養衛生管理基準」では、農場の飼養衛生管理については専門家の指導が必要と定められており、農場ごとに「担当の獣医師又は診療施設」を選定することが求められています。この担当の獣医師を“農場管理獣医師”といいます。
農場管理獣医師は、「飼養衛生管理基準」に従って農場ごとに選定された管理獣医師であり、その取組みにより農場から食卓まで、畜産物のフードチェーンにおいて農場とともに「食の安全・安心」を守っています。

「農場管理獣医師」の定義

「生産段階から流通、消費者までの各部門を把握し、生産者、消費者、動物、環境及び地域社会と共存し、コンプライアンスを重視しながら、行政及び関係各機関の専門家と連携して、消費者に畜産物の“安心・安全”を提供するために農場で活動する獣医師」

※平成29年6月:日本獣医師会産業動物臨床・家畜共済委員会報告の別添1
「農場管理獣医師の在り方と今後の課題」の「2農場管理獣医師の定義」

「飼養衛生管理基準」で定められた「農場管理獣医師」の定義

Ⅰ家畜防疫に関する基本的事項
獣医師等の健康管理指導
農場ごとに、担当の獣医師又は診療施設(家畜保健衛生所と緊密に連絡を行っている者又は施設に限る。)を定め、定期的に当該獣医師又は診療施設から当該農場において飼養する家畜の健康管理について指導を受けること。
「担当の獣医師」→「農場管理獣医師」

※「飼養衛生管理基準」:家畜伝染病予防法に基づき、各農場において家畜伝染病の発生を予防するため、家畜の所有者が遵守すべき事項を定めた基準です。

獣医療を提供する体制の整備を図るための基本方針
3 産業動物臨床分野及び公務員分野における獣医療の確保

(3)獣医師の養成と獣医療技術に関する研修体制の体系的な整備
③ 飼養規模の拡大が進展する中で、群管理形態の普及に対応した家畜の伝染性疾病の侵入防止や慢性疾病の発生低減等、予防衛生を中心とする的確な集団管理衛生技術の提供が重要になる。このため、産業動物臨床獣医師が、一般診療のみならず飼養衛生管理の指導が可能となるよう、必要な技能の取得を推進するとともに、集団管理衛生技術、農場経営、農場 HACCP 及び畜産 GAP に関する知識・技術等の修得を図る機会を増大し、診療だけではなく、飼養、管理及び経営等を含む幅広い指導を行ういわゆる管理獣医師として畜産農家の生産性の向上に資するような取組を推進する。

※令和2年5月「獣医療を提供する体制の整備を図るための基本方針」

農場から食卓まで、
畜産物のフードチェーンにおける「食の安全・安心」

安全→安全な生産・加工・流通段階→安心

生産農場において、
健康的な家畜を生産・飼養することが最も重要

  • 農場の生産性の向上
  • 畜産物の品質の向上、安定供給
  • 「食の安全・安心」の確保、新たな付加価値の提供

農場管理獣医師に求められる役割

産業動物臨床獣医師が、従来からの家畜の疾病の治療・予防等の一般診療だけでなく、いわゆる“農場管理獣医師”として農場ごとの飼養衛生管理業務を一元化することにより、飼養、管理及び農場経営等を含む幅広い指導を行い、畜産農家の生産性の向上等に寄与する役割を期待されています。
農場管理獣医師は、「飼養衛生管理基準」に従って農場ごとに選定された管理獣医師であり、農場の飼養衛生管理業務を一元化することで下記の役割を果たしています。

役割1

家畜の疾病と治療・予防するための診療技術の高度化への対応、幅広くかつ高度な獣医療サービスの提供

役割2

農場の生産性の向上、農場経営の効率化

  • ①農場単位での畜舎管理を含む、飼養衛生管理の指導・技術の提供により農場において必要な技能の取得を推進し、飼養衛生管理を向上
  • ②口蹄疫、豚熱等の家畜伝染病の侵入防止、早期発見・通報等家畜防疫の強化
  • ③集団管理衛生技術、農場経営の推進

特定症状または異常な死亡数を確認した場合の連絡

役割3

畜産物の品質の向上と安定供給

農場HACCPや畜産GAP(農業生産工程管理)の導入・普及等の指導による消費者に高品質で安全な畜産物を安定供給する責務の遂行

【農場HACCPとは】
*HACCP:Hazard Analysis Critical Control Pointの頭文字をとったもので「危害要因分析(HA)必須管理点(CCP)」といわれるものです。
農場HACCPは農場の飼養衛生管理にHACCPの考え方をとり入れて、生産される畜産物の安全性の確保及び生産性の向上を図るためのものであり、危害要因の分析・評価(HA)を行い、個々の農場の状況に応じた一般的衛生管理プログラムや必須管理点(CCP)を決め、適切な飼養衛生管理に取組むことにより最終的な製品の危害汚染を防止しようとするものです。

【畜産GAPとは】
*GAP(Good Agricultural Practice)はの頭文字をとったもので「農業生産工程管理」と訳されます。
畜産物の生産において、最も重要なことは、「食の安全・安心」を確保することです。畜産GAPでは「食の安全・安心」に加えて、「家畜衛生」、「農場運営」、「環境保全」、「労働安全」、「人権尊重」、「アニマルウェルフェア」を確保するための取り組み状況を記録簿や掲示物によって「見える化」しながら、点検と改善を続けることで、畜産物の「食の安全・安心」を確保し、より良い持続可能な畜産物の生産体制を築くことを目指します。

役割4

要指示医薬品の一元管理と使用の管理による薬剤耐性(AMR)対策の推進

動物用抗菌性物質製剤の使用による薬剤耐性菌のリスクを低減するために動物医薬品の適正な流通への取り組み、農場におけ医薬品の管理及び慎重使用(抗菌剤を使用すべきかどうを十分検討した上で、抗菌剤の適正使用により最大限の効果を上げ、薬剤耐性菌の選択を最小限に抑えるようにしようすること)の対策を推進します。

役割5

人及び動物の健康と野生動物を含む環境の保全を図るワンヘルスの推進とアニマルウェルフェア(動物福祉の実現)の実現

【アニマルウェルフェア(動物福祉の実現)】
世界の動物衛生の向上を目的とする政府間機関である国際獣疫事務局(OIE)の勧告において、「アニマルウェルフェアとは、動物の生活とその死に関わる環境と関連する動物の身体的・心的状態」と定義されています。
アニマルウェルフェアについては、家畜を快適な環境下で飼養することにより、家畜のストレスや疾病を減らすことが重要であり、結果として、農場の生産性の向上や畜産物の安全性・品質の向上にもつながることから、農林水産省は、アニマルウェルフェアの考え方を踏まえた家畜の飼養管理の普及に努めています。

【アニマルウェルフェアに対応した飼養管理】

  • 家畜のストレス軽減 > 免疫力の向上
  • ●農場の生産性の向上
    ●畜産物の品質の向上
    ●消費者の新たな付加価値としての認知
  • 「食の安全・安心」
農場管理獣医師は、これらの取り組みにより、
農場から食卓まで、畜産物のフードチェーンにおいて
農場とともに「食の安全・安心」を守っています。

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