認定・専門獣医師協議会

認定・専門獣医師制度とは

 令和6年7月24日、本会の認定・専門獣医師協議会(以下「協議会」という。)」が獣医師の専門性に関する認証を行う者として農林水産大臣の指定を受けることとなり、これにより、協議会が認証した団体により認定された「獣医師の専門性(認定獣医師・専門獣医師の資格)」に関する広告が可能となりました。

認定・専門獣医師の必要性の高まりと「認定・専門協議会」の設置

 認定・専門獣医師制度については、日本獣医師会において 20 年以上にわたり検討してきました。その一方で、獣医療関連の各学術団体では、動物飼育者に対する獣医療情報提供の充実や、専門分野における研鑽を積んだ獣医師の持つ知識や技術の証としての認定・専門獣医師の認定の必要性の高まりを受け、分野別の認定・専門獣医師を認定する活動が進められてきました。
 平成22年8月に公表された第3次「獣医療を提供する体制の整備を図るための基本方針」では、「生涯研修や高度研修を基礎とした診療獣医師の臨床獣医師認定制度や診療分野専門別の獣医師専門医制度の導入に向けた検討を推進する。」と記載されたものの、具体的な制度の検討は遅れていました。一方で、人の医療分野においては広告制限の見直しが進められていたことから、獣医療分野においても今後、広告制限の見直しが行われる可能性があり、その際に獣医師の専門性に関する広告を可能とする分野横断的な認定制度について具体的検討を進める必要があったことを背景として、本会は令和元年に特別委員会として総合獣医療・専門獣医療提供体制整備検討委員会を設置しました。
 その後、令和2年5月に公表された第4次「獣医療を提供する体制の整備を図るための基本方針」において、「専門的な診療を求める飼育者の選択に資するよう、獣医師の組織する団体等が中心となって、獣医師の専門性を認定等する仕組みの構築について検討を進める。また、獣医師の専門性を国民が適切に認知できるような獣医療広告のあり方について検討を進める。」と記載されたことを受けて、検討はさらに進められました。そして、令和3年9月10日に開催された第3回総合獣医療・専門獣医療提供体制整備検討委員会において、日本獣医師会内に「認定・専門獣医師協議会」を設置し、今後の対応を進めることが合意されました。

獣医療広告制限の見直しと農林水産大臣指定認定機関としての「認定・専門獣医師協議会」の指定

 獣医療広告については、飼育者等を誇大な広告等から保護するために従来から規制が行われてきました。その一方で、近年急速に進む獣医師の専門化や、愛玩動物看護師の国家資格化、デジタル社会の到来による情報化の発展など、獣医療を取り巻く環境の変化に対応した広告の在り方の検討が必要とされてきました。
 このため、動物の飼育者が提供を受ける獣医療サービスの内容を正しく知り、適切に選択できるようにする観点から、農林水産省では獣医事審議会において令和4年度から5年度にかけて獣医療広告制限の見直しに係る検討が行われ、令和5年3月に答申が示されました。これを受けて獣医療法施行規則の改正手続きが行われ、改正事項の一つとして令和6年4月1日から獣医師の専門性に関する広告が可能とされました。改正された省令では、広告できる条件として「農林水産大臣の指定する者が行う獣医師の専門性に関する認定を受けていること。」と定められており、この規定に基づき、このたび本会の認定・専門獣医師協議会が農林水産大臣指定認定要件確認機関として指定され、令和6年7月24日付け官報第1270号により告示されました。

獣医療法(抜粋)

(広告の制限)
第十七条 何人も、獣医師(獣医師以外の往診診療者等を含む。第二号を除き、以下この条において同じ。)又は診療施設の業務に関しては、次に掲げる事項を除き、その技能、療法又は経歴に関する事項を広告してはならない。
一 獣医師又は診療施設の専門科名
二 獣医師の学位又は称号
2 前項の規定にかかわらず、獣医師又は診療施設の業務に関する技能、療法又は経歴に関する事項のうち、広告しても差し支えないものとして農林水産省令で定めるものは、広告することができる。この場合において、農林水産省令で定めるところにより、その広告の方法その他の事項について必要な制限をすることができる。

獣医療法施行規則(抜粋)

(広告制限の特例)
第二十四条 法第十七条第二項前段の農林水産省令で定める事項は、次のとおりとする。
二 農林水産大臣の指定する者が行う獣医師の専門性に関する認定を受けていること。

獣医師の専門性の広告に係る獣医療法及び獣医療法施行規則(抜粋)

令和6年7月24日付け官報第1270号

○農林水産省告示第千四百五十号
獣医療法施行規則(平成四年農林水産省令第四十四号)第二十四条第一項第二号の規定に基づき、同号の農林水産大臣の指定する者を次のように定め、公布の日から施行する。

令和六年七月二十四日
農林水産大臣 坂本 哲志

獣医療法施行規則第二十四条第一項第二号の農林水産大臣の指定する者は、公益社団法人日本獣医師会認定・専門獣医師協議会とする。

農林水産大臣指定認定要件確認機関の決定に係る告示

認定・専門獣医師協議会の仕組と専門性の認証

 前述のとおり、認定・専門獣医師協議会は日本獣医師会の中に設置されています。
 その事業内容として、

  1. (1)認定・専門獣医師制度の整備に関する事業
  2. (2)認定・専門獣医師の認定分野及び名称に関する事業
  3. (3)専門性認定団体の認定要件の評価・認証に関する事業
  4. (4)認定・専門獣医師の認定・登録・管理に関する事業
  5. (5)認定・専門獣医師の公表に関する事業
  6. (6)その他前条の目的を達成するために必要な事業

 以上6項目が「公益社団法人日本獣医師会 認定・専門獣医師協議会規約」第4条に規定されています。協議会では、これらの事業を効率的かつ円滑に実施するため、いくつかの委員会を設置して事項別の対応に当たっています。
 なお注意すべき点として、協議会は、認定・専門獣医師制度全体の整備や認定分野・名称の検討は担うものの、個々の獣医師の専門性を認定するにあたって、認定を行うための研修や試験を協議会が行うわけではありません。協議会は、獣医師の専門性を認定する団体から申請を受け、各団体の専門性認定の方法が協議会の定める認定要件を満たすかを確認して評価を行い、問題が無いと判断した場合には認証を行うといった役割を担います。従って、個々の認定・専門獣医師の研修や認定試験等は認定団体であるそれぞれの学術団体が行い、その上で、協議会は各分野で認定された専門性を有する獣医師の認定登録や名簿の管理や公表を行います。なお、協議会が行う事業活動の公平性、適切性については、第三者により構成される外部評価委員会によって評価を受けることにより確保します。
 なお、協議会が専門性認定団体(認定獣医師や専門獣医師の資格を付与しようとする学術団体)の要件の評価を行うための基準は、協議会の「専門性認定要件評価・認証に関する細則」第4条に次のとおり規定しています

1 専門性認定団体に関する要件の評価基準
  1. (1)法人格の保有、財政的安定性
  2. (2)原則として100名以上の会員
  3. (3)団体としての有意な活動実績及びその内容の公表
  4. (4)定期的な獣医学に関する学術集会の開催(オンラインによる開催を含む)
  5. (5)冊子の発行等による定期的な獣医学に関する情報発信
  6. (6)専門性に関する資格の取得条件に関する規程の公表
  7. (7)専門性に関する資格の適正な認定試験の実施
  8. (8)専門性に関する資格の定期的かつ適正な更新
  9. (9)専門性認定を行った獣医師の登録及び公表
  10. (10)活動の内容等が公序良俗に反しないものであること
2 専門性認定を受ける獣医師に関する認定要件の評価基準
  1. (1)臨床歴、研究歴等
  2. (2)学術・技術講習会等(オンラインによる開催を含む)の受講
  3. (3)学会発表または論文発表
  4. (4)認定試験合格

 現在、学術団体からの申請を受けて協議会による評価・審査が順次進められており、令和6年7月26日現在、以下の団体による資格名が認証されています。

(1)動物臨床医学会(公益財団法人 動物臨床医学研究所)
資格名:獣医総合臨床認定医
(2)一般社団法人 日本獣医麻酔外科学会
資格名:① 動物麻酔基礎技能認定医
② 動物麻酔上級技能認定医
③ 日本小動物外科専門医
(3)一般社団法人 日本獣医がん学会
資格名:① 獣医腫瘍科認定医Ⅰ種
② 獣医腫瘍科認定医Ⅱ種
(4)公益社団法人 日本動物病院協会
資格名:① 獣医総合臨床認定医
② 獣医内科認定医
③ 獣医外科認定医
(5)一般社団法人 日本獣医循環器学会
資格名:① 獣医循環器認定医
② 獣医循環器上席認定医
(6)一般社団法人 日本獣医皮膚科学会
資格名:一般社団法人日本獣医皮膚科学会認定医
(7)日本産業動物獣医学会(公益社団法人 日本獣医師会)
資格名:① 乳牛農場管理認定獣医師
② 肉牛農場管理認定獣医師
③ 豚農場管理認定獣医師

 今後、さらに多くの学術団体による専門性認定要件確認が行われ、獣医療の各分野における認定・専門獣医師の活躍促進が期待されています。

認定・専門獣医師制度

獣医師の専門性に関する広告制限の特例に係る仕組み
(獣医療法施行規則第24条第1項第2号)

*農林水産省HP資料を一部改変

ページ先頭ヘ